特展「文化財よ、永遠に 2026:次世代へつなぐ技と人」が、現在泉屋博古館(京都・東山鹿ヶ谷)にて開催されています。住友グループの文化支援活動である公益財団法人住友財団の助成を受けて修復された文化財を公開する展示です。京都をはじめとする関西各地から集められた約30件の作品を三期に分けて紹介し、各作品が抱えていた課題や修復方法、そして今後の保存のあり方について解説します。
第I期(4月4日~5月6日)では、泉屋博古館蔵の重要文化財『佐竹本三十六歌仙絵 源公忠』や、三宝寺蔵の刺繍『涅槃図』などが展示されました。5月9日から始まった第II期では、乙訓寺蔵の重要文化財『十一面観音立像』や天龍寺蔵の重要文化財『観世音菩薩像』が公開されています。第III期(6月2日~28日)には、友禅史研究会蔵の重要文化財『紅縮緬地熨斗模様友禅染振袖』が展示される予定です。
展示は以下の三期構成で開催されます:
- 第I期:4月4日(土)~5月6日(水・祝)(終了)
- 第II期:5月9日(土)~5月31日(日)
- 第III期:6月2日(火)~6月28日(日)
祈りの象徴 — 「一日造立仏」
「一日造立仏」とは、祈雨や疫病退散などを祈願して、わずか一日のうちに造立・開眼された仏像のことです。鎌倉時代から室町時代にかけて、南都(奈良)周辺、特に興福寺の周辺で盛んに行われました。
第II期の目玉である長岡京市・乙訓寺の『十一面観音立像』は、わずか一日で完成したとは信じられないほど荘厳な造形を誇る仏像です。

像は寄木造で作られており、修復の際に腹部の前面パネルを取り外したところ、内部から200点以上の古文書が発見されました。これらの墨書により、文永5年(1268年)に奈良にて「一日造立仏」として制作されたことが確認されました。以前は京都府暫定登録文化財でしたが、その後、国の重要文化財に指定されました。発見された文書自体も、この春、表具師による修復を終えています。
運命との戦い — 横向きにされた絹本画
「水月観音像」は、高麗時代に広く制作された信仰画です。泉屋博古館の所蔵品は、高麗の宮廷画家である徐九方が1323年に描いたことが確認された極めて重要な基準作です。しかし、この作品は絹が本来の目とは90度回転した状態で使用されており、構造上の致命的な弱点となっていました。数え切れないほどの折れや亀裂が生じ、絵具の剥落が進むなど、作品はまさに危機的状況にありました。
これに対し、修復では標準よりもはるかに高密度で「折れ伏せ(亀裂部分に細く切った美濃紙を貼る補強)」を施しました。古い裏打ち紙を慎重に取り除き、新たに明るい色調の裏打ちを施すことで、暗がりに埋もれていた細部が蘇りました。

障壁画:5月19日からの新しい見どころ
通期で展示される障壁画は、三期とは別に展示替えが行われます。
5月19日より、それまで展示されていた東面に代わり、『雲龍図』(麟祥院本堂障壁画)の西面が展示されます。

同時に、法恩寺本堂障壁画(京都府指定文化財)のうち、塩川文麟筆『山水図』が『群仙図』に代わり、5月19日より公開されています。

第III期のみどころ:6月2日~28日
絵画、工芸、彫刻、古文書にわたる作品が引き続き展示されます。
重要文化財『紅縮緬地熨斗模様友禅染振袖』は、江戸時代の染織技術を結集した逸品です。かつてジョン・D・ロックフェラー2世を魅了し、京の地に残ることを願って寄付が寄せられました。その後、京都の美術館や職人たちが修復を手がけ、次世代へと守り継がれています。

『薬師十二神将像』(滋賀県指定文化財)は、滋賀県安土の神社に伝わる掛け軸です。南北朝時代の14世紀のものですが、鮮やかな青色の顔料が今もなお目を引きます。滋賀県内の施設や修復工房が協力し、折れ、破れ、剥落に対して修復を行い、その成果を会場で直接ご覧いただけます。

公式カタログ
カタログには、作品解説だけでなく、修復前の調査、修復プロセス、修復に関わった人々の物語などが網羅されており、手元に置いておきたい一冊となっています。
- 判型:A4変形
- ページ数:196ページ
- 価格:3,300円(税込)

展覧会インフォメーション

特展「文化財よ、永遠に 2026 — 次世代へつなぐ技と人」
住友財団 文化財維持修復事業の成果展示
会期:2026年4月4日(土)~6月28日(日)
| 期 | 日程 |
|---|---|
| 第I期 | 4月4日(土)~5月6日(水・祝) |
| 第II期 | 5月9日(土)~5月31日(日) |
| 第III期 | 6月2日(火)~6月28日(日) |
休館日:月曜日
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:泉屋博古館(京都・東山鹿ヶ谷)
入館料:一般 1,200円 / 学生 800円
お得な「3回入館セット券」も2,800円(税込)で販売中です。
主催:公益財団法人泉屋博古館、公益財団法人住友財団、日本経済新聞社、京都新聞
公式サイト:https://sen-oku.or.jp/program/202604_newlifefortimelessart/
同時開催:「大阪・関西万博 — 住友館のレガシー」
2025年4月13日から10月13日まで夢洲で開催された「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。住友グループの「住友館」は、住友グループの発展の礎となった愛媛県の別子銅山の森をテーマに、人と自然の共生と持続可能な社会の探求を掲げました。万博終了後、展示品や資料は住友グループ各社および関連施設へ引き継がれました。その収蔵先の一つに選ばれた泉屋博古館では、万博開催から1周年を記念し、住友館から受け継いだ資料を展示します。
注:観覧には同時開催の特展への入館が必要です。
会期:2026年4月21日(火)~7月31日(金)(予定)
展示品(予定):
- 住友館公式スタンプ
- 住友館グッズ
- 住友館で使用された木製ベンチ
- 森のジオラマ(「UNKNOWN FOREST」)
- 「UNKNOWN FOREST」のどんぐりやランタンなど(写真撮影可)