「堀さんと組むと、なぜかいつもヒットするという幸運に恵まれ、親しい友人となった」
(瀬戸内寂聴、エッセイ『寂庵こよみ』より)
2026年11月5日(木)より、東京・銀座のギャラリー「ナカジマアート」にて、「堀文子と挿絵 ~『寂庵こよみ』挿絵原画展~」が開催されます。
1918年に生まれ、激動の昭和を駆け抜けた画家・堀文子。戦中・戦後も制作を続け、家庭を支えるために「挿絵黄金時代」と呼ばれた新聞・雑誌の全盛期に挿絵の仕事を手がけ始めました。作家・瀬戸内寂聴の連載エッセイ『寂庵こよみ』には、“花の画家”として知られた堀が描き下ろした季節の挿絵が90点以上添えられており、そのうち50点以上の原画が今回初めて公開されます。
『寂庵こよみ』は1985年から東京新聞で連載されました。堀はキキョウ、スイセン、ツバキといった日本の草花や、軽井沢の風景・野草などを墨の濃淡と胡粉で描き上げました。寂聴との長年にわたる交友から生まれたこれらの作品を通して、挿絵という視点から堀の画業を紹介します。
本展は、2019年に100歳で没した堀文子の約80年にわたる足跡を辿る「堀文子の仕事」シリーズの一環として開催されます。
『寂庵こよみ』原画の初公開
堀と長年親交のあった作家・瀬戸内寂聴(1922-2021)は、1985年9月17日より東京新聞にてエッセイ『寂庵こよみ』の連載を開始しました。本展では、その連載のために堀が手がけた挿絵原画を初めて一般公開します。
これらの挿絵は、堀が得意としたキキョウ、スイセン、ツバキといった日本の花々や、当時のアトリエがあった軽井沢の風景や野草を、墨と胡粉で丁寧に描いたものです。堀特有の繊細な筆致が際立つ作品群です。

『寂庵こよみ』挿絵原画(第55回、1987年) © 一般財団法人堀文子記念館

『寂庵こよみ』挿絵原画(第57回、1988年) © 一般財団法人堀文子記念館

『寂庵こよみ』挿絵原画(第94回、1989年) © 一般財団法人堀文子記念館
瀬戸内寂聴と堀文子
瀬戸内と堀の交流は、1960年代に新聞社の企画で四国を旅したことから始まりました。その後、瀬戸内晴美時代から堀は小説の挿絵や装画、エッセイのカットなどを担当し、長年にわたり絆を深めていきました。
1974年、瀬戸内が京都・嵯峨野に「曼陀羅山寂庵」を開いた際には、堀が建設時の建築家を紹介したと言われています。

『婦人画報』1998年1月号の対談より © 一般財団法人堀文子記念館 撮影:広瀬祐子
「挿絵黄金時代」に育まれた堀の表現
戦後の日本は「挿絵黄金時代」と呼ばれ、一般向けの新聞や雑誌が空前の盛り上がりを見せていました。新聞という白黒の紙面の中で、墨の濃淡で描かれた挿絵は、読者の目を引く質の高さが求められました。堀はその期待に精力的に応え、晩年には「挿絵の仕事は、その後の創作に影響を与える大切な仕事だった」と語っています。
本展では、3階のメイン会場にて『寂庵こよみ』の原画を展示します。また、5階の展示室では『美しいキモノ』や『婦人画報』といった女性誌に掲載された草花の挿絵など、その他の貴重な原画もあわせてご紹介します。
デジタル化以前の印刷文化の中で生まれたこれらの挿絵からは、手仕事ならではの温もりを感じていただけます。
開催概要
展覧会名: 堀文子と挿絵 ~『寂庵こよみ』挿絵原画展~
会期: 2026年11月5日(木)~ 11月25日(水)
開館時間: 11:00 ~ 18:30
休廊日: 11月15日(日)
会場: ナカジマアート 3階・5階(東京都中央区銀座5-5-9 阿部ビル104-0061)
展示作品数: 約50点(予定)、墨絵および日本画
協力: 一般財団法人堀文子記念館
- ナカジマアート: https://www.nakajima-art.com/
堀文子暦2027
今年も『堀文子暦2027』が完成しました。発売から20年以上、一度も同じ絵柄が使われることのないこのカレンダー。今回は、堀が得意としたボタンや紅梅に加え、縁の深いイタリア・トスカーナの風景や軽井沢の高山植物など、一年を通して堀の世界観を楽しめる構成となっています。

- 価格:2,200円(税込)
- サイズ:縦53.0cm × 横36.4cm
- 仕様:8枚綴り
画文集『堀文子の墨絵』
画文集『堀文子の墨絵』の先行予約が開始されました。1985年から東京新聞で連載された瀬戸内寂聴のエッセイ『寂庵こよみ』のために堀が描き下ろした墨絵約60点を収録。かねてより要望の多かった墨絵作品集がついに実現しました。
庭の花々や野菜など、身近なモチーフを墨の濃淡と胡粉で描き込んだ作品群と、折々に堀が綴った言葉をあわせて収録しています。

- 価格:1,980円(税込)
- サイズ:15 × 22.5 cm
- ページ数:56ページ
2026年 日本各地で開催される堀文子展
没後7年を経てなお、堀文子の展覧会は日本各地で毎年開催されています。その80年にわたる画業の軌跡を楽しめる機会が今年も揃っています。
- 女子美アートミュージアム(母校):「堀文子の出発点 女子美からはじまる写生帖・下図・本画」(5月22日~6月27日)
- 軽井沢高原文庫:「堀文子展 いのちのつながり」(7月18日~10月12日)
- 中村屋サロン美術館:「堀文子展 生命の煌めき」(現在開催中、12月6日まで)
- 安曇野ちひろ美術館:「いわさきちひろと堀文子 童画の世界」(現在開催中。1918年生まれの激動の昭和を駆け抜けた二人の初の合同展)
公式サイト:
- 安曇野ちひろ美術館: https://chihiro.jp/azumino/
- 中村屋サロン美術館: https://www.nakamuraya.co.jp/museum/
堀文子について

1964年頃、青山のアトリエにて © 一般財団法人堀文子記念館
堀文子は1918年、東京・麹町平河町に生まれました。女子美術専門学校(現・女子美術大学)を卒業。在学中から新美術人協会で発表し、戦後は創造美術、新制作協会日本画部、創画会などで活躍しました。
卒業後、外交官の美濃部三郎と結婚。新制作協会(現・創画会)会員として活動する傍ら、病弱な夫を支え、家庭を守るために雑誌や絵本の挿絵も手がけました。
1952年に第2回上村松園賞を受賞し、以降、革新的な日本画家として注目を集めます。
1961年には約2年間の海外旅行へ出発。その後は「一所不住」を信条に、神奈川・大磯、長野・軽井沢、そして69歳でイタリア・アレッツォへと拠点を移し、晩年は大磯で制作を続けました。生涯現役を貫き、1997年(78歳)から2016年(98歳)まで毎年、銀座のナカジマアートにて「堀文子 現在(いま)」展を開催。画家としての評価のみならず、その生き方や言葉は多くの人々の共感を呼び続けています。自然への畏敬の念と生命の驚きを抱き、独自の感性で多彩な作品を生み出しました。2019年に100歳で没した後も、近年各地で回顧展が開催されています。
- 一般財団法人堀文子記念館: http://www.horifumiko-foundation.jp/