麻布台ヒルズのGallery 舞台裏にて、アーティスト・谷原菜摘子の個展「宴」が2026年9月4日(金)から10月11日(日)まで開催されます。
本展では、「宴」をテーマに色鮮やかなベルベット生地に描かれた新作シリーズが公開されるほか、会期中には展示の世界観を食を通じて体験できる、一夜限りの晩餐会イベントも開催されます。
9月4日(金)午後6時からは、予約制のレセプションが予定されています(入場無料、要予約、チケット制)。
主催者コメント
Gallery 舞台裏では、谷原菜摘子の個展「宴」を開催いたします。
2021年に京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程を修了し、関西を拠点に活動する谷原は、「自身の抱える負の記憶と、人類の闇を混ぜ合わせることで形成される美」を追求し、赤や黒のベルベットを下地に、スパンコールやラメ、金属粉を用いて幻想的な物語を描き出すことで知られています。近年では、京都市京セラ美術館、国立国際美術館、兵庫県立美術館、大原美術館、大阪中之島美術館、徳島県立近代美術館など、複数の美術館に作品が収蔵されるなど、その活動の幅を広げています。
本展において谷原は、「宴」の光景を舞台にした新たな作品群を制作しました。展示空間に広がるのは、色鮮やかに描かれた豪華絢爛な祝宴の風景です。溢れんばかりの美味しい料理とワイン、人生の喜びを謳歌する人々。しかし、この祝宴は決して万人を祝福する永遠の安寧ではありません。華やかな世界の背後には、不均衡な現実と、足元に迫りくる激流が潜んでいます。戦争という現実が近づき、同じテーブルについた誰かが闇に飲み込まれていく中で、祝宴の客たちは何事もなかったかのように無関心なままです。谷原は、今を生きる儚い喜びと、目の前の恐怖を直視できない人類の冷徹な倫理について、作品を通じて問いかけます。
観客であるあなたもまた、無関係な傍観者ではいられません。世界が闇に沈むその前に、甘美で誘惑的なこの宴をどうぞご堪能ください。
アーティストコメント
宴への招待状
谷原菜摘子
崩壊が目前に迫り、激流に飲み込まれそうになっている時でさえ、私たちはその危機に気づかないままでいるのかもしれません。あるいは、気づいていたとしても、見て見ぬふりをして、まだ大丈夫だと言い聞かせているのかもしれません。
遠い国で戦争が始まり、多くの命が失われるニュースは、私たちの日常から遠く離れた出来事のように感じられることがあります。しかし、その影響は物価の上昇や社会の変化として、気づかないうちにじわじわと私たちの生活に浸透し、侵食していきます。それでも人々は、破滅がすぐそこまで来るまで、それを自らの問題として受け入れることができません。
世界は一枚の食卓のようなものです。
そこには色とりどりの料理が並べられ、人々は談笑し、酒を酌み交わします。しかし、座る場所や権力のバランス、他者への忖度や虚栄心ゆえに、誰もが平等にその恩恵にあずかれるわけではありません。目の前に食べ物があっても、すべての客に同じカトラリーが与えられているわけではないのです。私たちは、目の前の皿だけでなく、周囲の視線や空気に支配されています。正しいと信じながらも手を伸ばせないこともあれば、皆と同じ方向に歩いている自分に気づくこともあります。
そして、食卓の端に座っていた誰かが闇に飲み込まれていくとき、遠くに座っている人々は会話を続け、食事を楽しみます。それは自分とは関係がないと信じているからです。しかし、闇は静かにテーブルを広がり、一人、また一人と飲み込んでいきます。自分の足元が崩れ始めたときには、もう逃げ出す術はありません。
だからこそ、この作品もまた、一種の「最後の晩餐」なのです。
彼も、彼女も、豪奢な料理も、燭台も、カトラリーさえも、いずれ闇の中に落ちていき、同じ宴は二度と訪れません。
だからこそ、その日が来るまで、人々は食べ、話し、愛し、美しさを求め、祝宴を開くのです。
すべてが崩れ去り失われてしまう前に、この宴に並べられた特別な料理と美酒を、あなたにも味わっていただければ幸いです。

《宴》, oil on velvet, acrylic, oil pastel, glitter, and rhinestones, 2026
©Natsuko Tanihara, courtesy MEM
谷原菜摘子の「宴」ディナー
麻布台ヒルズ「Gallery 舞台裏」で開催される谷原菜摘子の個展「宴」に合わせ、2026年9月13日(日)午後6時より、谷原本人をホストに迎えた晩餐会を開催します。
都内のパン店で14年間勤務し、フランスでの経験も持つシェフ・小川ロミ氏が、本展のために考案した特別メニューをお楽しみいただけます。
当日はアーティスト本人も同席します。
メニュー例(食材の調達状況により変更の可能性があります)
Food(抜粋):
アミューズ
- シャンパンとキャビアのひとさじ — 「贅沢と祝福、宴の始まり」
アントレ
- 無花果とエディブルフラワーのサラダ — 「枯れゆく中でも美しく咲く花」
メイン
- アッシェ・パルマンティエ — 「肉と土、生と死の境界線」
プレデザート
- フロマージュブラン — 「浄化、静寂」
- ライチのソルベ、オリーブオイルとフルール・ド・セルを添えて — 「祝祭の熱気が静かに収まる」
デザート
- 「祝祭の終わりに訪れる虚無と結末」
Drinks(例): 各種ワイン、ビール、ソフトドリンク等。ドリンク代は当日現地にて別途精算となります。
日時: 以下より選択可能
- 2026年9月13日(日)午後6時
- 2026年10月4日(日)午後6時
価格: 1名 10,000円(税込)
定員: 各回7名様
会場: Gallery 舞台裏
所要時間: 約120分
アレルギー等がある場合は、予約画面終了後のアンケートフォームにご記入ください。食事や飲み物に関するリクエストは、お問い合わせにて承ります。
アーティストプロフィール

Photo by Kazuo Fukunaga
谷原 菜摘子
1989年埼玉県生まれ。2021年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。主な受賞歴に、第7回絹谷幸二賞(2015)、VOCA奨励賞(2016)、第39回京都府文化賞奨励賞および咲くやこの花賞(2021)、2025年度兵庫県芸術奨励賞、亀高文子記念赤艸社賞などがある。黒や赤のベルベットを下地に、油彩やアクリル絵具、ラメ、スパンコール、金属粉を用いて「自身の抱える負の記憶と、人類の闇を混ぜ合わせることで形成される美」を描き出す。2017年五島記念文化賞美術新人賞受賞に伴い、パリで1年間研修。2021年には国文学研究資料館のアーティスト・イン・レジデンス「ないじぇる芸術創生ラボ」に参加し、古典文学に触発された作品を制作。2022年には結城座の人形劇のデザインや宣伝美術を手がけるなど、文楽や能といった伝統芸能とのコラボレーションも積極的に行っている。作品は京都市京セラ美術館、国立国際美術館、兵庫県立美術館、大原美術館、大阪中之島美術館、徳島県立近代美術館など、公的機関に多数収蔵されている。
Instagram: @natsuko_tanihara
インフォメーション
谷原菜摘子個展「宴」
会期: 2026年9月4日(金)~10月11日(日)
※ レセプション: 9月4日(金)午後6時より予定(入場無料、要予約、チケット制)
※ 谷原菜摘子の「宴」ディナー: 9月13日(日)午後6時より(要予約、有料)
アーティスト: 谷原 菜摘子
開館時間: 11:00~18:00
休館日: 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日)
入場料: 無料
会場: Gallery 舞台裏
所在地: 東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F
アクセス: 東京メトロ日比谷線「神谷町駅」5番出口直結、バリアフリー対応、車椅子・ベビーカーでの来場可
主催: ArtSticker(運営:The Chain Museum)
協力: MEM
展覧会詳細: https://artsticker.app/events/147116
Gallery 舞台裏

Gallery 舞台裏は、ArtStickerを運営するThe Chain Museumが手がけるアートギャラリーです。舞台の余韻の中で出演者と観客が親密に対話するように、作品を鑑賞するだけでなく、人との出会いを生む場を目指しています。プログラムは、世界のアートシーンで歴史を刻んできたベテランから、注目を集める若手まで幅広く扱い、時には食やパフォーマンスの要素も取り入れています。
空間自体は、スチールパイプのフレームと仮設展示壁で構成されたミニマルな設計です。約26坪という限られた広さの中で、床の高低差、照明の明るさや色温度、仕上げ材の違いを使い分けることで、二つの異なる気配を演出しています。この特徴的な空間設計を通じて、「表」と「裏」がシームレスに混ざり合う新しい鑑賞体験を提案し、空間の隙間から視線や気配が交錯する場を目指しています。
Instagram: @butaiura_artsticker